Wednesday, March 09, 2005

小野原信善+大原始子編 2004 ことばとアイデンティティ

多言語社会の中での言語選択が個人のアイデンティティ形成にいかに影響を及ぼすか
言葉の機能1)コミュニケーション 2)アイデンティティ

1章 アイデンティティ試論 小野原信善(香川大学教授)
  フィリピンの言語意識調査から(私立エリート女子校118名と公立校27名にアンケート調査)
  エリクソンのアイデンティティ論
  フィリピンの言語使用(周辺から中心へのシフト現象)100種以上の言語のうち、9割が10大言語、残りが弱小言語話者。
   弱小言語話者は村外では地域語をリンガフランカとして使用していたが、弱小母語は次第に駆逐
   10大言語の母語話者も国語(フィリピノ語≒タガログ語)にシフトさらに英語に移行の傾向
     言語階層性(序列) 英語>フィリピノ語(タガログ)>9大言語>地方語>弱小語
  アンケート結果の分析
   エリ8割・一般7割:生活言語(混合表現 Taglish)が母語(タガログ)の機能に取って代わりつつある。
   エリ:Taglish が機能的母語(階級アイデンティティ) 一般:タガログが母語(母語アイデンティティ優先)
2章 フィリピン多言語社会での言語とアイデンティティ 小張順弘(信州大学講師)
  セブアノ人多言語話者の複合的アイデンティティ
      セブアノ語(セブアノ人・ピサヤ人 土着地域文化イデオロギー)
      フィリピノ語(フィリピン人・国民国家イデオロギー)
      英語 (西洋文化イデオロギー)
3章 インド人とはだれなのか? 鈴木義里(都立狛江高校教諭)
  多言語社会の典型インド人のアイデンティティ
      1970s 新聞革命                \  国民
      1982 カラーテレビの輸入緩和によるテレビの普及 /  意識
  エスニック・グループの定義 (W・イサジウ)では、言語は5番目に過ぎない。
     (1共通の民族的・地理的出自、共通の祖先 2同一の文化・慣習 3宗教 4人種・肉体的特徴 5言語)
4章 アイデンティティの多層性と言語の選択・切り替え 大原始子
   シンガポールにおける言語の選択 国語=マレー語 公用語=英語、マンダリン、マレー語、タミル語→シンガポール英語 
   ダイグロシア /高変種 標準シンガポール英語
    diglossia   \低変種 口語シンガポール英語
   多言語社会における基礎的ストラテジー
   ポライトネス・ストラテジー
   多言語社会におけるメタプラグマティック・ストラテジー

5章 北アメリカ北西海岸先住民にみる言語とアイデンティティ 渡辺己
   20C初頭に北アメリカ全土にわたって、先住民のコドモを「教育」する寄宿学校。そこでは母語禁止。強制改名。
   言語復興の例:ヘブライ語(ベン=エフダによる) ランミ語(言語の紋章的機能のみ)
   
6章 ニュージーランドにおけることばとアイデンティティ  P.Batten
   
7章 在住フィリピン人女性の新しい言語アイデンティティ 河原俊昭
       日本語>英語>タガログ語>地方語
   日本人の 英語>日本語 (英語コンプレックス)に気づき、英語の能力をいかす

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