米原万里 2004 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 角川文庫
ロシア語会議通訳・エッセイスト
2002年、本作で大宅壮一ノンフィクション文学賞受賞
少女時代すごしたプラハのソビエト学校での思い出。
ギリシャ人亡命者の娘リッツア
ユダヤ系でルーマニアの党幹部の娘アーニャ
ユーゴスラビアから来たボスニア・ムスリム人のヤスミンスカ
ユダヤ系ルーマニア人で政府要人の娘アーニャは、一般のルーマニア人なら不可能な外国留学、外国人との結婚をし、現在の自分を90%イギリス人といい、少女期におぼえたロシア語(ソビエト国際学校)をほとんど忘れている。アーニャは少女期からたわいもないウソをよくついていて、ウソを自分でも信じ込んでいるようなところがあった。
タイトルになっている「真っ赤な真実」とはなんだろう。50年代、60年代に共産主義(赤)が目ざした人民のための政治という理想(真実)ということだろうか。それは、アーニャの、貴族のような暮らしぶりをしていながら、お手伝いさんや、バスの運転士に「同志〜」と呼び掛けるウソっぽさと対照されている。矛盾だらけの自分の暮らしぶりに、自分で自分を騙して過剰適応したアーニャが、ロシア語での学校生活はすべてウソ、真っ赤なウソと自らをまたしても90%否定し、自分をイギリス人と考えて現在の生活を楽しんでいる。そんなロシア語を話さないアーニャもマーリ(万里)とは英語(アーニャ)とロシア語(万里)とのちぐはぐ対話で意思疎通するなつかしい旧友同士だ。何人としてではなく、ただ個人として、その親友がいる。それが人と人とのつきあいの真実の姿だ、というのがアーニャの「真実」かもしれない。
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