Sunday, January 10, 2010

落語家はなぜ噺を忘れないのか 柳家花緑 角川SSC新書 2008年刊 

目次
第1章 落語家はなぜ噺を忘れないのか
 志ん朝に「愛宕山」「元犬」を教わる まず褒める、それから直す。  
 小三冶に「船徳」を習う 覚え方を覚える
 口上は覚えにくい 「蟇の油」繰り返し覚えることのみ
第2章 いかにして噺に命を吹き込むか
 小三冶「ウケさせようと思ってやっているのか? だったら別に落語じゃなくてもいいじゃねえか。聞いててもまったく景色が見えてこねえ」=語りによってその場その場の景色を聞く人に想像させる →笑いがなくても心に残る
 「粗忽長屋」(小さん十八番)=芝居がうまくなければいけない
 小さんの「時そば」では、そばをすする音が、とろろそばの音。「しっぽく」の音よりも「らしい」から。リアリティよりも「らしさ」が大事
 「守・破・離」=噺をコピーする・出稽古で様々な落語家の考えや芸を取り込んでいく・自分だけの芸に仕上げる
 ①人物描写に徹する姿(表面) ②技術=間・らしさ・緩急 ③ウケたい(中心)の順番が狂うとバランスを失う。
第3章 落語家にとっての噺の種類
 ネタのジャンル キーワードごとの分類=親子もの・子供もの・若旦那もの・殿様(侍)もの・女性もの・動物もの・与太郎もの・粗忽もの・幽霊もの 季節ネタ
 尺=長さ
 小三冶「出来心」
 小さん一門では「道潅」を最初に覚える。
第4章 自分のネタを作る―『笠碁』への挑戦
 小さん十八番「笠碁」へのチャレンジの過程
第5章 伝承芸としての落語
 小さんの稽古「芋俵」「御神酒徳利」「つる」
 立川談春「紺屋高尾」(「蒟蒻問答」小さんと談志の「稽古がそっくり)
 小さん・小金治に稽古
 教えてもらうときは礼を尽くす(米朝にはドンペリ持参)
巻末 柳家花緑版『笠碁』―全文収録
 

落語家が高座に上がるまでにやっていること、高座の上で考えていることを、自らをモデルに明かす。
タイトルの「落語家はなぜ噺を忘れないのか」に始まり、「どうやって噺を面白くするのか」「どんな噺が難しいのか」等々、落語にまつわる創意工夫を公開。
あまり明かされることのない、落語家の頭の中、手の内を見せる。
祖父であり、人間国宝ともなった五代目柳家小さんからの教えも随所に登場。
柳家一門および一門を超えて受け継がれていく落語の伝承が感じられる一冊。